高齢者と介護者が「快適」に過ごすには:深津紘二朗

介護環境の研究者・深津紘二朗。お年寄り(シニア層)は超高齢化社会にどう適応し、周りはどのように支援していけばよいのでしょうか。

介護負担尺度と老人ホームの研究 - 深津紘二朗

国立長寿医療研究センター

介護者の負担を定量化するために、米・ペンシルベニア州立大学のスティーブン・ザリット教授が「介護負担尺度」を20年以上前に考案しました。

国立長寿医療研究センター(旧:国立療養所中部病院・長寿医療研究センター)は、これを翻訳して研究を進めました。「介護のために体調を崩したと思ったことがあるか」「介護にこれ以上の時間はさけないと思うことはあるか」など22の設問に、「思わない」から「いつも思う」までの5段階を0~4点で答えてもらいます。

負担を定量化することで、介護者に過度の負担がかからない方法を探ることができます。米国にザリットの尺度を使った研究がいくつかあり、国際的な比較研究にも取り組みました。


老人ホームの個室の広さ、温度、湿度

老人ホームの環境がどうあるべきか、必ずしも科学的に解明されていません。個室の部屋の面積(広さ)は約11平方メートルと定められていました。しかし、この科学的根拠は明らかではありませんでした。部屋の広さと健康の間には何らかの関係があるはずです。

ほかにも、温度や湿度の適正な設定、効果的なクラブ活動など、研究対象になるテーマは多くありました。

所者が鉢植えや写真を持ち込む

また、施設側が一方的に提供する環境とは別に、入所者が鉢植えや写真を持ち込んだり、個室で自由に過ごしたりする個人的な生活環境があります。

こうした環境を自由につくり上げることを積極的に認めると、入所者の健康状態が明らかに違うといいます。なぜ、元気になるのでしょうか。いくつか理由は考えられるのですが、それを科学的に明らかにすることで、よりよい環境がつくり出せるでしょう。


深津紘二朗